Happy! 柳沢超 少年愛小説


舌で耳の裏をなぞられて、それから耳たぶ、耳の中、と愛撫される。「じゃあ、無理」。大粒の涙をこぼしながら、桜庭は水を求めて部屋から出ようとドアの鍵を開けた。「今までだって許してたわけじゃないよ。ただ、僕のほうがずっと達郎のことを好きだったから、気まずくなりたくなくて何も言えなかっただけだ。……僕は臆病だからね」。その任務に心臓が止まりそうになる。表向きは仕方ない、という風情を装って、高敏は再び嘉瑞の前に膝をついた。黄金色の髪。

「ねえ、青嵐、知ってる?俺、青嵐が大好きなんだよ」。「おまえが必要だ。そう言っただろう。それに……おまえは鮫島に撃たれるかもしれないのに、俺を命懸けで守ってくれた」。「はい」。そんなことすら考えられない。地王の腕の中で、蘭は唇を噛(か)み締めるようにそう言った。ただフワフワと宙を浮くような感じは嫌いではない。「愛は死にました。あなたに感じていた好意的な感情は、ほぼ二十四時間前に、わたしの裡で息絶えました」。

水貴よりも少し遅れて、由良が二人の前に現れた。

イギリスで最も美しい季節だというのに、本来濃い緑色をしているはずの芝生(しばふ)はどんよりとした雲の下で灰色に染まっていた。「ああ。覚えておいてやるよ。ケニー・レイヴンという男をこの身体で」。嘉瑞が、怪訝そうに続きを促す。「交渉に時間が掛かったのは、途中で来客があり、わたしは後回しにされたからです……。それよりも、夕食はどうしました?」。決して、純粋な日本人では描け得ぬ彫りの深い美貌。勘助がもう起きているのか、それともこんな時間まで不寝番をしてくれたのかと首を傾げながら土間に入った当真は、まだ薄暗い店内の上がり框に座っている修一郎を見つけてぎょっとする。

計算されつくして設計されたようにすばらしかった。「分かっているなら、どうして!」。

「お前、冷てぇぜ。もっと俺様を甘やかせよ」。そしてまだぼやけている目を手の甲で擦(こす)るようにしてから、また目を開けた。「コーヒーをどうぞ、総裁」。「どうして?」。


ボーイズラブ小説作品紹介


電車に乗れば痴漢に遭い、接待に赴けばセクハラ被害……そんな新米リーマン、水穂の前に古風なコートを纏った超美形が……。男は自分は魔王で、かつてイギリスの深い森の中で迷子になった4歳児の水穂を助け、その時に花嫁の印をつけたと言う。そうして、今や美味しく成長した水穂の身体を傲然と頂く男、泰昭。翌朝、水穂が出勤すると、泰昭が新社長に就任していて……。悪魔フェロモン炸裂!パワエロコメディ★ イラスト:わたなべあじあ

タイトル:その男、魔王!?
著 者 名:葵ゆきの
レーベル:月の秘密シリーズ
発 行 元:イースト・プレス

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